路傍の水

日々 絵や創作のこと

2017/11/16 北海道新幹線

初めての関西、初めての古都、京都!
日本の古き良き街並み、木造建築、その他諸々沢山吸収して帰らないと!と意気込んで京都駅に降り立った俺は、
「あっつ!!!」
出鼻を挫かれていた。
「そんな分厚いコート、まだこっちじゃ早いですよ」
「こっちの駅員さんコートすら着てないですもんね…」
東海道先輩はというとまだ上着すら着ないで、シャツにベストという出で立ちだ。さすがに肌寒いんじゃないかと思ったが、そういえば筋肉が多い人は体温が高いっていうのを聞いたことがある。そうだ、だから北海道さんはすぐ着込んで膨らんでるのに函館先輩は薄着のままなんだっけ。
北海道だってもちろん観光地はあるし、外からのお客さんは多いと思っていた。だけどここは何だ、まるで空港みたいに多国籍だ。
「関西弁より外国語の方がよく聞こえてきますね」
「僕も外国人観光客の数は東京よりも多いんじゃないかと思います。きっと、外から見ればこういう『日本らしい』街並みや建物が物珍しいのかもしれません」
僕はずっと見てるし、沿線のいたるところにあるから珍しいものには思えないんですけどね、と東海道先輩は笑っている。そうか、俺はあの外国人観光客たちと同じ気持ちで京都を楽しみにしていたんだ。
東海道と北海道。一文字違うだけなのに、文化や歴史は大きく違う。北海道という名称も、東海道をもじったものだという説もある。函館先輩に京都に行くと伝えると、恥をかかないように勉強していけとボロボロになった本を渡された。それは日本史を勉強するための本だった。
相当な書き込みやどのページにもついている開き癖に、函館さんのかつての努力がみえる。きっと、一度恥をかいたのだろう。あの人が本土にでたがらない理由は知らない。それでもいつも以上に強い筆圧を感じる書き込みの数々に、かつて本土とのことでとても悔しい思いをしたことが伺えた。
俺らは開拓の痕跡、そして未だに開拓の最中なのだと兄によく言われていた。俺が出来れば、より本土との距離は近くなると、まるで北海道は本土から離れていてはいけないとでもいうように何度も何度も言っていた。
楽しんでいってくださいね、と東海道先輩は良かれと思って『観光客用』の案内図を渡す。その時の疎外感をどう言葉にすればいいだろう。
颯爽と新大阪へ向かう先輩を見送り手元の案内図に視線を落とす。ひとりになった俺の耳元を掠めていく外国の言葉が身近に感じられた。

『余所』
2017/11/16